【神性喜劇】 日本編

なぜか満たされなくて

イザナギとイザナミは,大きな八つの島と小さな六つの島を生みました。これで任務を立派に果たしたと言えるのではないでしょうか。

どの島も温暖な気候で、草や木が生い茂り、鳥や獣たちが群れています。川や海には魚があふれています。

しかし、これほどまでに生き物で満たされた豊かな土地なのに、イザナギとイザナミは何かが足りないような気がしてなりません。でも、何が足りないのかがわかりません。

この満たされない気持ちを埋めようと、二人はいつもにも増してお互いをむさぼり合いました。

「はあっ、はあっ。」

イザナギが息を切らしながら、身体を動かします。

「ん…んん…。ああ!」

イザナミがあえぎ声をたてます。

「いい! とてもいい!」

二人の身体は一つになって高まり合いました。

「ああああ!」

その後は穏やかな時を過ごしながら語り合います。

「おれたちに足りないものって何なんだろう。」

「わたしにもわからないわ。でも、この子が生まれたらわかるかもしれないわ。」

イザナミには、これで妊んだ子はこれまでとは違った子になるような、そんな新たな予感が芽生えたのです。

大きなことをしよう!

イザナミが新たに生んだのは男の子で、大事忍男神(オオコトオシオノカミ)と名付けられました。

これまでに生まれた子どもは皆、島になりました。しかし、このオオコトは島にはならず、イザナギ・イザナミと同じ姿のままでした。しかも、とても利発なのです。

ある日、オオコトはこんなことを言い出しました。

「父上、母上、この国には何か足りないものがあると思いませんか。」

イザナギもイザナミも自分たちが感じていたことを言い当てられて、びっくりしました。

「オオコトや、お前には何が足りないのかわかるのかい。」

「ぼくにもわかりません。だから、それを探しに旅に出てみようと思います。」

オオコトは、そう言うと旅支度をしてオノコロ島を出発しました。

しばらくして戻ってきたオオコトはこう報告しました。

「わかりました。この国に足りないもの、それは人間です。」

「人間?」

「そうです。鳥や獣のような生き物ですが、我々と同じ姿をしています。それがこの大八島にはいないのです。」

「では、どうしたらいいのだ?」

オオコトはもうすでに答えを見つけていました。

「他の土地から来てもらうのです。」

「他の土地? そんなものがあるのか。」

「そうです。ここからもっと南の方に島々があります。そこは竜宮に住む神々が治めています。そこから漁の得意な人間を呼び寄せましょう。」

竜宮は高天原とは違う神様のいるところです。

「東の方からは狩りのうまい人間を呼び寄せましょう。」

東とそれに連なる北の土地は「カムイ」と呼ばれる神様たちが治めています。

「それから海の向こうの西から北にかけては大きな土地が広がっています。そこから稲作の上手な人間を呼び寄せましょう。」

西の大きな土地は青龍・朱雀・白虎・玄武という四神が治めています。これもまた高天原の神様とは違う神様たちです。

こうして、大八島は様々な土地からやってきた人間でにぎわいました。

人間はセックスが大好き──そして神様も

この人間という生き物は他のどんな生き物よりもセックスが好きでした。他の生き物が決まった季節しかセックスをしないのに対して、人間は年がら年中です。

しかもセックスの仕方も一通りではありません。前から後ろから、上になったり下になったり、立ったり座ったり。人間は好奇心が強くて、しかも工夫することが大好きなのです。

そんな人間たちの様子を見ていると、イザナギとイザナミは、満たされない気持ちなど、どこかに吹き飛んでしまいました。

「イザナミ、いとしい女…。」

イザナギの呼びかけにイザナミも答えます。

「イザナギ、いとしい男…。」

そして二人は見つめ合います。お互いの瞳の中にいるのも、もう自分たちだとわかっています。

そして口づけをし、お互いの感じるところを触り合います。

「ん、んん…。」

イザナギの手はまずイザナミの乳首をいじります。

「ああ!」

乳首はもうピンと立ち始めました。

イザナミも手をイザナギの股間に伸ばします。そこにはもう堅くたぎりたったモノがありました。イザナミはその棒を片手で握り、もう片方の手でその根本の袋をそっとなでました。

「おお!」

イザナギは思わず声を上げました。

イザナギはもうすぐにでもホトに入れたくてたまらなくなりましたが、我慢してイザナミのホトの入り口を指でいじりました。そこからはもう、愛液があふれてきていました。

「ああ…、来て…、来て…。」

イザナミが言いますが、ここで少しだけじらします。

イザナギはホトに口づけをし、舌でなめ回しました。

「あああ〜。」

イザナミは身体をくねらせ、もう我慢できないといった様子です。

「まだだよ。今度はおれにもやってくれ。」

イザナギは自分のモノをイザナミの顔の前に差し出します。

イザナミはあえぎながら竿をなめます。上から下へ、下から上へ。表も裏も。

「うう…、いい、いいぞ。たまらない。もう爆発しそうだ…。」

ホトに入れずに爆発してしまってはいけません。

イザナミはあわてて舌を離します。

「うわっ。」

イザナギはもうこれ以上は耐えられません。イザナミのホトを目指してまっしぐらです。ホトはさっきからもういつ来るかと待ちかまえていました。

二人はつながりあい、共に激しく身体を動かしました。

「あああああ!」

イザナギはイザナミの中で爆発し、イザナミはその放出をすべて受け止めました。こうして、二人からはまたたくさんの子どもが生まれていきました。

人間も神様と同じようにセックスを愉しみ、たくさんの子どもを生みました。まるで青々とした草が生い茂るようにその数をどんどん増やしていったのです。それで、人間のことを「青人草(あおひとくさ)」と呼ぶようになりました。

註:日本神話には人間がどうやって生まれたのかという記述がありません。

また大事忍男神がどんな神であったのかはまったくの謎となっています。しかし、島ではない初めての神で、その名前からして何か大きな事をしたのは間違いがありません。

それで、この二つの空白を結びつけてみました。他の土地の神話には人間の誕生のことが記されているので、大事忍男神がそこから人間を招き寄せるという大事をしたと考えてみました。




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