目次
目の中の諍い
昔の日本語でセックスを意味する「目合い(マグワイ)」とは、目と目を見交わすことです。イザナギとイザナミは、もう一度「目合い」の原点に戻ってみることにしました。
間近で目と目を見交わすと、相手の瞳の中に何かが見えてきます。
「おまえの目の中に誰かがいる。何者だろう? とても美しい男だ。」
イザナギはそうつぶやくと胸がちくりと痛みました。
「あなたの目の中にも誰かがいるわ。とても美しい女…。」
イザナミもそうつぶやくと胸がちくりと痛みました。
二人とも自分自身を見たことがなかったのです。
「お前はいったい誰をそんな所に住まわせているのだ?」
「あなたこそ、いったい誰をそんな所に住まわせているの?」
「知らないよ。」
「知らないわ。」
目合いどころではありません。ケンカが始まってしまいました。
「ひどいわ、ひどいわ!」
イザナミはもう泣きじゃくっています。
イザナギはあらぬ疑いをかけられて腹が立ってきました。
「だって、本当にお前の目の中に男がいるのだから。」
イザナギはそう言ってイザナミの顔を両手でわしづかみにし、もう一度目をのぞき込みました。すると、そこにいる男が口をへの字に曲げています。
イザナミもイザナギの目をもう一度まじまじと見ました。そこにいる女は涙で目を腫らしていました。
「…いったいこれは?」
自分が驚けば目の中の人物も驚き、自分が笑えば目の中の人物も笑います。こうしたことを繰り返して、ようやく相手の目の中にいるのがどうやら自分の姿だとわかりました。
「お前の中にいるのはおれ自身の写し身だったのか。それほどお前はおれを愛しく思っているんだな。」
「あなたこそ、それほどわたしを愛しく思っているから、私の写し身を住まわしているのね。」
お互いがお互いを愛しく思うが故の諍いでした。
初めての口づけ
「お前の涙はこうやって拭おう。」
イザナギは唇で涙を吸いました。イザナギの唇はイザナミの目の下から頬に至り、そして唇に達しました。
唇と唇を合わせた時、二人の中でまた新しい感覚が芽生えました。
「ん…、んん…。」
唇と唇を重ね合わせた柔らかな感触に浸りながら、二人とも夢見心地でした。
やがて、イザナギは舌をイザナミの唇の間に押し当ててきました。
「ん!」
イザナギはなぜそうしたのかわかりませんが、舌をイザナミの中にそっと差し込みました。イザナギの舌は、イザナミの唇の隙間から強引に入ってきました。
「んんん!」
舌の求めに応じてイザナミが口を軽く開けてみると舌がどんどん奥まで入ってきます。口の中がイザナミの舌でいっぱいです。
「んー!」
イザナミはなぜか、ホトがズキズキと疼き、ホトに入るイザナギの熱いモノを欲しました。
「はやく、来て」と言おうとしましたが、言葉になりません。
そして、どんどんホトに何も入っていないのがたまらなく苦しくなってきました。
「んんん、んん…。」
イザナミは身体をくねらせ、腰を震わせました。イザナギはイザナミが何かを言おうとしているのを、なんとも言えない高まりを覚えました。
二人は自然に交わした口づけで、身体が熱くなり、お互いを求めていることに気がついたのです。
ようやくイザナギは唇を放しました。二人の唇と唇の間は粘りけのある液体でまだつながっています。それが糸のように細くなってぷっつりと切れた時、イザナギはイザナミを抱きしめました。
「唇が触れるだけで、こんな気持ちになるなんて、何なのかしら?」
「おれもだ。ホトに入れてもないのに、イってしまいそうになったよ。」
それからゆっくりと押し倒しました。
初めてのクンニとオーガズム
「ホトをよく見せて。」
イザナギはそう言いながら、イザナミの足を大きく開きました。
こんな姿勢でまじまじと見られたのは初めてです。
「あ…。なんだか恥ずかしいわ。」
イザナギはホトに頭を近づけました。
「えっ、何するの。」
「お前もおれにこうしただろう。」
そう言うと、イザナギはイザナミのホトを舌でなめ始めました。
イザナギはなめている舌で何か突起のようなものが当たるのに気がつきました。見てみると、ホトの入り口の上側に、丸く小さな突起があります。
「なぁ。イザナミ。なんだろう。この丸いものは。」
そう言って、舌でつついてみました。
すると、イザナミの身体がビクンと飛び跳ねました。
「あぁっ!そこはダメだわ。貫かれるような刺激が走ってしまう。初めてだわ、こんな刺激。」
「痛いのか?」
「いいえ。痛くはないのだけれど…。何なのかしら?うずうずする。もう一度舐めてみて。」
イザナギは、今度はその突起に舌をねっとりとあてがいました。
「あぁっっ!!すごいわ。気持ちいいのかしら。わからない…でももっと欲しい。その熱い舌の感触が欲しいわ。」
イザナギはイザナミの要求するまま、ホトとその突起を繰り返しなめ続けました。するとイザナミは、大きな声とともに、身体を震わせイってしまいました。
「いつもの感覚とは違う感じだったけれど、私イったみたい。とても気持ち…よかった。」
ホトが震え、中からトロッとした液が出てきました。
「突起もそうだが、ここをなめると気持ちがいいかい?」
涙と同じような味がします。全ての源である海にも似ています。
「ああ…、気持ちいい。入ってきて、奥まで…。」
イザナギは舌を奥まで入れてみました。
「いやッ、ああ、いい…、だめッ…。」
イザナミは腰をくねらせます。
「いいのか嫌なのかどっちなんだい。」
「もっと…。」
「もっと何だって? はっきり言って。」
「もっと太…。」
イザナギにはもうわかりましたが、あえてこう言います。
「ちゃんと言わないと、一番欲しいモノをいれてあげないよ。」
「もっと…太いのを…入れて…。」
「よしよし、ちゃんと言えたね。また今度もホトの突起をなめてあげるからね。」
こうしてイザナギとイザナミは、クンニが気持ちいいことを知ったのです。
大八島の完成
イザナギは身体を起こすと、もうさっきから固く太くなっている自分のモノをイザナミのホトに差し入れました。
「あああ!」
「これがほしかったんだね。」
「ん、ん、ん…。」
イザナミは言葉の代わりにイザナギを抱きしめようと腕を伸ばします。イザナギはそのままイザナミの上に覆い被さりました。二人は互いにしっかりと抱き合いました。
イザナミの腰が自然と上がってきます。イザナギは束ねた草をイザナミの腰の下に差し込みました。
「どう? 草枕だよ。」
「いい、いいわ…、とても…。」
二人の動きはひとつになり、絶頂に達しました。
「あ、あ、あ、あああー!」
どちらにも「秋津」が入っていますが、これはトンボのことです。トンボの中には交尾する時にはオスとメスとでハート型になるものがあります。愛を高めあった二人はこのトンボが作る愛の形に特別な思いを寄せたのでしょうか。
オオヤマトアキツシマとは本州だということになっていますが、現在の奈良県、あるいは近畿地方を指すのではないかともいわれています。というのも、神話の舞台はほとんど西日本で、東国のことはかなり後にならないと語られないからです。それに奈良県も近畿地方もなんとなくハート型をしていません?
ともあれ、こうして「大八島」と呼ばれる八つの大きな島が生まれました。
これで二人の国生みは終わったのでしょうか。いえいえ、まだまだ続くのです。
【神 性 喜劇】 日本編 Vol.9
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